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プロジェクトの成功には何が必要なのだろうか?

きっちりとしたプロジェクト・マネジメントを遂行することはもちろん必要であるが、それ以上にPMBOK®注目したい記述がある。

 「プロジェクトの全体としての成功は、プロジェクト・チームのコミットメントにかかっている。プロジェクト・チームのコミットメントは、チームの動機づけのレベルに直接関係する」(PMBOK®第5版より引用)

プロジェクトを成功させる大きな要因の一つとして、PMBOK®にはこのように記載されている。では、どのようにプロジェクト・チームを動機づけし、コミットメントしていくのか。本記事ではこの方法について考察したい。

 

チームの動機づけとは

チームとしての動機づけには、言うまでもなくプロジェクト・ステークホルダー全員の動機づけが必要となってくる。さらにステークホルダー全員がプロジェクトに対するエンゲージメント(愛着心・思い入れ)を持っていれば、チームとしてより強いコミットメントができるであろう。

当然、プロジェクトのステークホルダーの一人であるプロジェクト・マネジャーが動機づけされ、プロジェクトにエンゲージメントを持っていることが前提である。(参考記事:成功を生むプロジェクト・マネジャーが行う“最初の一歩”

動機づけは、「成功を生むプロジェクト・マネジャーが行う“最初の一歩”」でも紹介したが、PMBOK®では次のように記載されている。

 プロジェクト環境での動機づけは、プロジェクトの目標を達成するとともに、個人の価値観を最も満足させる環境を作ることが大切である。

(PMBOK®第5版より引用)

プロジェクト初期段階でステークホルダーの動機づけ、さらにはエンゲージメントの引き出しまでできればよいのではあるが、さすがに難しい。

しかし、プロジェクトの初期段階のチーム形成においてプロジェクト・マネジャーは、ステークホルダー全員の価値観を把握し、その価値観を満足させる動機づけの環境を構築する計画(ステークホルダー・マネジメント計画)を立てことはできるであろう。

また、チーム形成というプロセスは、プロジェクトの初期段階だけでなく継続的に実施されるプロセスであり、この継続的プロセスの中で、それぞれのステークホルダーの価値観を重視したコミュニケーションを通し、エンゲージメントをより強く引き出すことが可能になるはずだ。

ステークホルダーの価値観と動機づけ

では、どのようにして、ステークホルダーの価値観を見つけ、動機づけしていけばよいのだろうか。

二つのステークホルダータイプ

 筆者はステークホルダーを大きく二つにグループ分けしている。

・サポートグループ

直接プロジェクトの推進はしないが、権限を用いることでプロジェクトの運営をサポートしてくれるステークホルダー

例)部門マネジャー、トップ・マネジメントグループ(役員)など

・推進グループ

直接プロジェクトの推進をするステークホルダー

例)チーム・リーダー、メンバー、ユーザー側の担当者など

なお、プロジェクト・オーナーは、どちらのグループにもなり得る。

グループごとに価値観の見つけ方を考えてみよう。

 サポートグループの価値観の見つけ方

 サポートグループに属するステークホルダーは、人・コスト・納期・品質に対し、具体的な利害関係を持っている。また、権限も持っているため、うまく価値観を見つけ出し、価値観を満足させる環境にすることでプロジェクトが円滑に進む可能性が高くなる。

サポートグループには「このプロジェクトに何を期待するか」を聞いてみるとよい。その問いに対する代表的な反応を例にあげる。あくまで一例であり、反応や価値観もステークホルダーごとに異なる。「チーム力UPしたいプロジェクト・マネジャーが必ず持つべきスキル」で紹介した「傾聴のスキル」を磨きあげてコツをつかんでほしい。

 

 (1)  「プロジェクトの成果に大いに期待する」(支持)

支持的な反応するステークホルダーは、プロジェクトに大いに関心を持ち、サポートも期待できる。反面、プロジェクトの動向には口うるさくなる可能性があり、プロジェクト・スコープを揺るがす恐れもある。engin

「なぜ期待するのだろう?」「どんな思いが期待をもたせているのだろう?」といった相手の内面を意識した傾聴を心がけ、相手の価値観をみつけていくことが必要だ。

 

 例)ステークホルダー:Aさんの例

 PM: このプロジェクトの成功は、Aさんにとってどんな意味があるのですか?
 Aさん:  本当は自分が指揮したいぐらいなんだよ。もともと自分が構想していた内容だからね。
PM: そうなんですか。なんかトンビに油揚げさらわれたように悔しさが感じられるんですけど?
Aさん: うん、すごく悔しい。だけどこればかりは仕方ないし、後任の彼なら信頼もおけるので、応援に回るよ。
 PM: Aさんのプロジェクトへの思いと心遣いは凄く心強いです。何か迷った時には相談に乗っていただけますか?
 Aさん: 喜んで。自分の考えた構想が大きく崩れるのも嫌だからね。

 

上記の例でどんな価値観が見えたであろう。

もともと自分が構想していた内容だから、指揮したい。構想は大きく崩したくない

・自分の「成果」を出すことに価値観

応援に回る。喜んで相談に乗る

・自分が「貢献」できることに価値観

・自分が「参加」することに価値観

このあたりではないだろうか。

 

この例で見つけた価値観を満たす場を作るには、Aさんに相談する機会を多くもつことであろう。相談といっても意思決定の相談ではなく、案ベースのものに対する助言を求めにゆくのがよいだろう。このコントロールをしないとプロジェクト・スコープを揺るがす可能性が出てきてしまうためだ。そこを避けつつ、ステークホルダーの価値観を満たす対応をする必要がある。

 

(2)  「まぁ、うまくやってくれ」(中立)

このような中立的な立場を表明されると、あまりこのプロジェクトに関与したくない、自分に波風が来ないことを望む人だと決めつけがちだが、もう一歩踏み込んでほしい。信頼しているから任せているのかもしれないし、細かい報告を期待されているのかもしれない。いずれにせよ、いざという時には動いてもらえそうなステークホルダーなので、価値観を明確にし、価値観を満たす場を作り上げることを考えていく。

支持立場と同じように「どんな報告を求めるのだろう」「どんな思いが中立的立場を牽引しているのだろうか」といった傾聴を心がけ、相手の価値観をみつけていくことが必要だ。

 

例)ステークホルダー:Bさんの例

 PM  : Bさん、どんな報告させていただければよいでしょうか? 
 Bさん: 現在の状況よりも、今後の見通しを中心に報告して欲しい。 
 PM  : 今後の見通しで特に重視したい報告内容はありますか? 
 Bさん: 予算とコストの対比かな。このプロジェクトの重要さはよく理解はしているので、予算オーバーの可能性があるのならば、他のプロジェクトを中止してでも追加予算を確保しなければと思っている。ただ本当に追加が必要なのかを明確にしておかないと他のプロジェクトから恨まれるから。
 PM  : わかりました。コストの今後の見通しがわかるように報告いたします。 

 この例でわかるBさんの価値観は

  追加予算を明確にしておく

・「事実」、「正確性」を重要視する価値観

他のプロジェクトから恨まれる

・「調和」、「平和」を重要視する価値観

 この例でBさんの価値観を満たす場を作るには、事実に基づいた正確な予測数値を出し、万が一追加予算が必要になった場合には、他のプロジェクトが見てもわかるような報告資料を作成する必要がありそうだ。

 

(3)  「そもそも私は反対なんだ」(抵抗)

girl-boy抵抗を示すステークホルダーは、最悪プロジェクトを潰しにかかる可能性があるから注意が必要となる。恐らくそのステークホルダーの価値観を踏みにじられている可能性があり、「その踏みにじられている価値観は何か」「どうして踏みにじられていると感じているのか」を意識した傾聴を心がける。

 

例)ステークホルダー:Cさんの例

 PM  : このプロジェクトのどんなところに反対なのですか? 
 Cさん:  このプロジェクトよりも、現場が困っている問題を解決するプロジェクトを先に行うべきなんだ。
 PM  : といいますと? 
 Cさん: 以前から現場から相談されていて、解決を早くしないと現場が困るばかりか、せっかく信頼関係を築いてきたのが台無しなってしまい、今後の部門の運営にも差支えがある。 
 PM  : なるほど、それは大変ですね 

 この例でわかるCさんの価値観は

 相談されている、今後の部門の運営にも差支えがある

・「認知」、「パートナーシップ」を重要視する価値観

信頼関係が台無しになる

・「信頼」を重要視する価値観

 この例の場合、Cさんの部門の人たちからの信頼が失われ、認知されず無視される状態になり、部門の統率が取れなくなることを恐れている。自分が価値観として大切にしているものが失われることに対する恐怖である。もともとCさんが持っている価値観を満たす場は、その恐怖を取り除くことのできる場である。例えば、Cさんと今回のプロジェクトの利点ともたらす効果について納得するまで話し合い、Cさんの口から部門のメンバーに今回のプロジェクトの必要性を説いてもらう場を提供するなどが考えられる。

 

顧客側のサポートグループのステークホルダーには、ここまでの対話をするのは難しいと感じているかもしれない。できないとあきらめる前にできる方法を考えてみよう。顧客側のプロジェクト責任者と共にステークホルダーのところに行き、対話することはできないだろうか?

 

見つかったサポートグループのステークホルダーの価値観、および考えられる価値観を満たす場を作る計画をステークホルダー・マネジメント計画として策定する。その計画を実施してゆくことで、サポートグループのステークホルダーが動機づけされ、プロジェクトへエンゲージメントを持ってくれるようになる。

 

推進グループの価値観の見つけ方

 プロジェクトを実際に推進するステークホルダーが動機づけされ、プロジェクトに対するエンゲージメントを持っていれば、プロジェクトの成功確率は格段に向上するであろう。プロジェクトを自分事として捉え、積極的に関わるからである。

 

プロジェクトのメンバーに指名される際、「あなたはこのプロジェクトでどのような成長をしたいですか?」といった動機づけをするケースがある。筆者の経験上、メンバーは「自分の評価を下げない」ための答えをすることが多い。本来自分の持っている価値観のトップに「成長」があればよいのだが、「貢献」とか「協力」とかの自分の成長よりも周りへの支援や一体感に価値観を置くメンバーもいる。中には早く仕事を片付けて自分の時間をつくることに、もっとも高い価値観を持つメンバーもいるかもしれない。

 

メンバーからは、普段の仕事や生活で大切と考えていることを聞き出し、その中から価値観を見つけ出していく。ここでも傾聴を使って対話すproject_sる。 「なぜそのことを大切にしているのだろう?」「大切にするとその人はどんな満足感を得られるのだろう?」といった相手の内面に興味を持ちながら、対話をしてゆく。一つでも価値観を見つけられたら、さらにその価値観をどのようにプロジェクトで活かせていけるかも対話してゆく。

 

 推進グループのメンバーの例)

 PM: 今までの仕事で何か心がけてきたことは?
メンバー: 生産性を上げることです。 
 PM: 生産性を上げるとどんなメリットがあるの? 
メンバー: コストがそれだけ下がりますよね。 
 PM:  確かに。では生産性をあげると、あなたにはどんなメリットがあるのですか?
メンバー: 私にですか?残業を必要とせずに早く帰れます。実施には他の遅れている作業が割り振られてしまうことが多いのですが・・・ 
 PM: 早く帰宅して何かやりたいことでもあるのですか? 
メンバー: 家族と一緒に食事ができるんです。遅いと私一人になってしまうし、子供は寝ているし・・・ 
 PM: なるほど。家族とのつながりを大事にされているんですね。 
メンバー: そうです。家族だけじゃなくて、友達とのつながりも大切にしています。 
PM: 是非、このプロジェクトでも生産性を上げてもらって、つながりを充実できるとよいですね。ところで、予定外の作業があなたに割り当てられることを防ぐために、何かよい方法はないでしょうか?
メンバー: そうですねぇ・・・遅れが発生しないようにすればいいので、他のメンバーも生産性を上げてもらうことですね。とすれば、私が生産性を上げる方法を考えて伝えるのはどうでしょうか?
PM: いいですねぇ。でもそれをするとあなたに負担がかかるのではないですか?
メンバー: それはそうですけど、私が伝えることでメンバーとのつながりも強められる時間もできるし、なによりもプロジェクトが少しでも良い方向に向かえばよいと思います。
PM: なるほど。メンバーに伝える時間も考えて、あなたの仕事量も調整していきますね。

【メンバーの価値観】

つながりを大切にする:「つながり・絆」

他のメンバーに伝える:「貢献」

 

この例のように一気に価値観を活かすところまで対話できなくても構わない。対話と対話の間の時間を空けることで、メンバーがより深く考え、別の価値観やその活かし方が生まれることもある。

大切なのは、メンバーに活かし方を考えてもらうことだ。考えることでメンバー自身の価値観を活かせる環境が身近に感じられ、プロジェクトへの期待感と共に動機づけがされる。

 

加えてプロジェクト・マネジャーは、実際に活かせる場を提供できるように役割分担や仕事の割り振りを考えてゆく。これが推進グループに対するステークホルダー・マネジメント計画となる。

 

また、ユーザー側(顧客側)の推進グループのメンバーに対しては、こうした対話がやりにくいケースもあるだろう。その場合には、ユーザー側の推進グループをまとめる立場の人に趣旨を説明したり、開発側メンバーを動機づけする場面を見てもらったりし、その人にユーザー側としての動機づけをお願いするのがよいかと思う。

 

最後に

 支援グループ、推進グループいずれの場合も、一度の対話で価値観を見つけ出すのは難しい。傾聴による対話を何度か繰り返し価値観をつかみ、その価値観を満たす場を作り出す計画(ステークホルダー・マネジメント計画)を立てていくとよい。

handsその計画が実行されるに従ってエンゲージメントも強くなっていく。その結果、プロジェクトを自分事として捉えて自然と積極的に関わるようになり、プロジェクトを成功へと導くチームが形成されていくこととなる。

 

 

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